『川とノリオ』(6年)

                                     TOSS SANJO  田 代 勝 巳
6年生『川とノリオ」を分析批評で授業した。全12時間の記録である。         見開き発問100のページへ       

 指導計画
 時            学  習  内  容
 1  ・音読練習
 2   ・音読練習、意味調べ
 3 ・前半部分を読む。登場人物の検討をする。
4・5 ・色彩語を選び、何を象徴しているか考え、分類する。
6・7 ・対比されているものを選び、どういう点で対比されているか話し合う。
 8   ・クライマックスとピナクルの位置を検討する。 
 9 ・「川っぷち」ででてくるものを選び出し、何を象徴しているか考える。
 10 ・作品の主題を考える。
11・12  ・評論文を書く。 
 
 授業記録
(1)第1時 7月2日(月)
  @教師の範読
  A追い読みによる音読練習
(2)第2時 7月3日(火)
@交代読み
A意味調べ


 

指示 思ったこと、わかったこと、気がついたことをノートに書きなさい。
 
5分程度で子どもたちが書いたのは次の通り。
  1)小さいうちから父と母をなくしてかわいそうだ。
2)現在、戦争がなくてよかった。
3)この題名で戦争の時の物語だとは思わなかった。
4)遊びつかれるまで母ちゃんをまっていて、かいわそうという反面すごいと思った。
5)なぜノリオは川が好きだったのか。
6)冬の川によく入れるなあ。
'7)爆弾が落ちてくるなんてこわい。
8)本当に川がよんでいるように見えるのかな。
9)ノリオはちゃんと学校に行っているの。
10)ノリオはいたずらっ子。
11)ノリオは友達がいないのか。
12)川だけがノリオの友達なのか。
13)一人で遊んでいて楽しいか。
14)父さんがほしくないのか。
15)ばあちゃんはほしくないのか。
16)ノリオは一人ぼっち。
17)この時代は貧しい。
18)川と友達になった。
19)両親がいない。
20)ノリオが仕事をもつなんてすごい。
21)戦争はこわい
   22)戦争はしたくない。
23)この話は本当にあった話か。
24)なぜ戦争をするのか。
25)どうして「川の音」ではなくて「川の声」と書いてあるんだろう。
26)ノリオはどうしてものを流したのか。
27)どうしてノリオは神様なのか。
28)「B29」とはなんだろう。
29)川が笑ったり話しかけたりして不思議だ。
30)ノリオはなんでカタカナ
31)川の声ってなんだ。
32)母ちゃんの名前は。
33)タカオって誰だ。
34)ノリオは生きているのか。
35)ノリオは成長している。
36)川がたくさんでている。
37)ノリオとじいちゃんのは二人きりでかわいそうだ。
38)ノリオはそれからどうしたのか。
39)実話のようだ
40)強い子に生きてほしい。
41)ノリオは八月六日をどう思っているのか。
42)この後、じいちゃんはどうなったのか。
43)じいちゃんのいっている工場は何工場か。
44)この物語の続きがあっtらよみたい。
45)かまの音がどうしてサクッなのか。
46)どうしてこんな生活をしなきゃいけないのか。
47)なぜノリオという名前なのか。
48)昔は男の人がいっぱいしんだの。
49)川はノリオの親友かなと思った。
50)ノリオは強い子だと思った。
51)ノリオは川の近くに住んでいる。
52)なんでノリオは夢中でげたを川に投げたのか。
53)ノリオの父ちゃんいったとき母ちゃんはさびしそう。
54)なんか自然な感じ
55)その川にはいると気持ちよさそう
56)川がノリオをひいているよう。
57)ノリオは川がすきなのかきらいなのか。
58)母ちゃんは優しい人だ。
59)ノリオはショックだったんだろうな。
60)川のにおいはあるのかな。
61)何がつかまらないんだろう。
62)なんで「ハイキュウ」があったんだろう。
63)なんでノリオはじいちゃんの子だと思ったんだろう。
64)とてもむごい話だ。
65)ノリオは母ちゃんが死んだことを知らなかったから知らせた方がいいと思った。
66)「知らない方が幸せなこともあるんだな」と思った。
67)ノリオは不幸なのか幸せなのかわからない。
68)おぼんの日がこわく思えた。
69)お母さんは運が悪いと思った。
70)ヒロシマに落とされた爆弾はこんなにひどいとは思わなかった。
71)いつごろのことだろう。
72)母ちゃんはノリオに別れを言えないままなくなった。
73)じいちゃんは最後のノリオを大切に育てた。
74)戦争時代なんだ。
75)ノリオは元気な男の子。
76)じいちゃんは木で何かをつくるのがうまい。
 
(3)第3時 7月4日(水)
  @指名なし音読
  とぎれたところで全員起立して、一斉音読(P.63L5まで読む)


 

発問1 この物語の登場人物は誰か、ノートに箇条書きにして書きなさい。
 
  子どもたちから次のものがあがった。
  ・ノリオ ・母ちゃん ・じいちゃん ・父ちゃん ・川 ・タカオ 
  ・タカオの父ちゃん  ・近所の人  ・やぎ   


 

発問2 この中でおかしいものはありませんか。
 




 

発問3 川は登場人物ですか。登場人物ではありませんか。登場人物だと考えたら○、そうではないと考えたら×とノートに書きなさい。書けたら理由も書く。理由が一つ書けたら先生のところに持ってきなさい。
 
  ノートをチェックした後、人数を聞いた。


 

○・・・・18人     ×・・・・・・5人
 
  少数派から理由の発表をした。
  ×川は何もしていないで流れているだけ。
×劇などで考えると川は登場人物にならない。
×劇で考えると川のする役割はない。
×川は実際にしゃべっているわけではない。
○川は人物ではないけど人間みたいにしゃべっている。
  ○川や人間のように動いている。
  ○川はノリオに話しかけているから。
○62ページの4行目に「呼びかける」61ページの8行目に「呼んでいる」と書いてあるから。
○58ページの最後の行に「川の声」とかいてあって、ふうつならば「川の音」と書くはずだから。
  この後、相手の意見に対して反論を考えさせた。そして指名なし討論を行った。
○私は川は登場人物と考えます。劇で考えると川は必要ないと言ったけど、川のせりふ、川のしゃべっている部分があるので、劇で考えても必要だと考えます。
×私は×です。この話の場合、しゃべっている場合「 」を使っていて(  )はたぶん思っていることをあらわしているので、それべっていることにはならないと思います。
○反対です。母ちゃんがしゃべっているところで(  )を使っているところある。
○私は○です。登場人物というのは人間のように話したり、人間のように行動するものだから、川は笑っているので登場人物だと考えます。
×川が笑ったところなんか見たことありません。
○別に川が笑ったと○○さんは言ったのではなくて、登場人物にあてはまるときに人間のように行動すると言っただけです。
○〜さんが言ったのは現実のことで、この物語には63ページの13行目に「川はまた、キラキラ笑いだす。」と書いてあるので、川は登場人物だと考えます。
×ぼくは×だと考えます。川の声はノリオ自身で感じていることだと思います。
×私も×です。川の音ではなくて川の声と書いてあると言ったけど、作者のいぬいさんが比喩を使ったんだと考えます。
  ○私は今の意見を聞いて○から×にかわりました。
  ここでとぎれたので、相談の時間をとった。そして再び人数をきいた。


 

 ○・・・・・14人   ×・・・・・9人
 
  何人かに意見をきいてみた。
  ○ 比喩だと言ったけど(  )は本当に川の言った言葉だと思います。
×それは思ったことで証拠にならない。
○ぼくは○です。川はしゃべっていないけど、劇には必要だから。
×私は比喩という話を聞いて、川は登場人物ではないと考えました。


 

指示 今日勉強したことをノートにまとめなさい。
 
(4)第4時 7月5日(木)
 前時につづき登場人物の検討をおこなった。
 指名なし音読の後、次の発問をした。

発問4 父ちゃんは登場人物ですか。
 
 ○の理由として、
  ・劇で考えれば父ちゃんの役割は必要だから
  ・ちゃんと登場しているし、書いてあるから。
 というものがあがったが、反論として、
  ・せりふがない。
  ・父ちゃんのことは書いてあるけど、登場していない。
  ・60ページの8〜11行目まではノリオが思い出しているだけ。
  ・「〜っけ」と書いてあるので、これは過去のことを思い出しているだけだ。 
 という意見が出た。
  ・父ちゃんは「箱」になって登場している。
 という意見も出たが、
・それは父ちゃんではなくて、父ちゃんの骨。たしかに父ちゃんの骨だけど、登場人 物としての父ちゃんではない。
 という意見が出て、父ちゃんは登場人物ではないということになった。

発問5 この物語の設定はどうなっていますか。ノートに書きなさい。設定とは、登場人物、時代、場所などのことです。
 
  次のようにノートにまとめた。





 

登場人物  ノリオ、母ちゃん、じいちゃん
主人公   ノリオ
場所    ヒロシマ近くのまち
時代    戦中、戦後
 
 
(5)第5時 7月9日(月)

発問6 この物語にでてきた色は何ですか。また、それは何をあらわしていますか。ノートにまとめなさい
 
 子どもたちは教科書を読みながら、ノートにまとめていった。
 そして、黒板に次のようにまとめた。











 

  銀
  白
  真っ白
  黒
  赤
  金
  青
  なまり
  うす青
  青々
 

 すすき、水、やなぎの芽、太陽
 すすき、波、じいちゃんのかみ、筋、あひる、日がさ
 のぼり
 目、ゴムぐつ、パンツ、きれ
 とんぼ、輪、赤んぼ
 光
 輪、りんの火、ガラスのかけら、空、いぬのふぐり
 川
 ノリオの世界
 草
 
 
(6)第6時 7月10日(火)
 前時にまとめた表をもとに、色について考えた。

発問7 ノリオにとって一番幸せな色はどれですか。
 
 全員ノートに書かせた。「うす青」という子もいたが、ほとんどが「金色」と書いた。  理由を聞くと、「64ページの8行目に、ノリオは小さい神様だった。金色の光に包まれた、幸せな二才の神様だった。」ということで、「金色」に落ち着いた。
 つづいて、

発問8 ノリオにとって一番つらい色はどれですか。
 
 これはすぐに答えがでなかった。そこで、「ここだと思ったら先生の所に持ってきてごらん」と指示をだした。
 全員がもってきたところで、教師の解「なまり色」を告げた。

発問9 では、青色は何をあらわしているのでしょうか。
 
 指名して聞くと、子どもたちからは、次のものがでた。
・ノリオの強く生きようとする気持ち
・ノリオの決心
・ノリオのがんばる力
・ノリオの強い決心
 全てでたところで、教師の解「これから力強く生きようとするノリオの心」を告げた。
 時間があったので、P60の3行目〜P61の4行目まで一斉音読をしたあとで、次の発問をした。

発問10 この場面で対比されている色はどれとどれですか。
 
 赤と白

発問11 赤と白は、生と死をあらわしているのだとしたら、どちらの色が生で、どちらの色が死をあらわしているでしょうか。 
 
 人数を聞くと、
 赤ー生 白ー死 が21人、その反対が2人であった。
 2人に理由をきくと、答えられなかった。多数派からは「白は父ちゃんを見送るときにでてきていて、父ちゃんは死んでしまうから死をあらわしているし、赤は赤とんぼが自由にとんでいるところにでてくるので、どこまでも飛んでいける自由さということで生をあらわす。」という理由が出た。
 2人の子どももこの理由を聞き納得した。
 
(7)第7時 7月11日(水)
 P69の6行目〜「冬」の場面を一斉音読する。

発問12 冬との場面では、対比されているのは何と何ですか。
 
 この発問は、伴一孝氏の追試である。(『文学教材キー発問活用小辞典』(明治図書))
 ノートに次のようにまとめていった。











 

    冬

  

 ノリオ
 じいちゃん
 なまり色
 冬         泣く 
 空っ風
 工場へ通っている
 こおりつく
 

 タカオ
 父ちゃん
 青
 もうじきくる春
 笑う
 かれ草
 通る
 もうじきくる春
 
 それぞれどんな感じがするかも、表にまとめることとした。







 

    冬

   

 寒い
 さみしい
 くらい
 ブルー
 

 暖かい
 うれしい
 あかるい
 ピンク
 
 
(8)第8時 7月13日(金)
 ここも、伴一孝氏の追試(『文学教材キー発問活用小辞典』(明治図書))である。

発問13 この物語のクライマックスはどこでしょうか。クライマックスとは、物語が一番もりあがるところです。主人公がガラッとかわるところともいえます。ここからクライマックスがはじまると思うところに線を引いて、もってきなさい。
 
 クライマックスを初めて学習するためか、かなり悩んでいた。教科書に線を引いてくるが、なかなか正解が出ない。10分ほどして、正解者がえでた。つづけて正解が5人でて、列がとぎれたので、教師の解を示した。
 今まで自分の気持ちを表現しなかったノリオがはじめて気持ちをあらわすところ73ページからである。つまり、
                

白い日がさがチカチカゆれて、子どもの手を引いた女の人が、葉桜の間を遠くなった。
ザアザアと音を増す川のひびき。
ノリオは、かまをまた使いだす。

サクッ、サクッ、サクッ、母ちゃん帰れ。
サクッ、サクッ、サクッ、母ちゃん帰れ。
 
である。

発問14 ではピナクルはどこでしょうか。ピナクルとは、クライマックスの中でも一番盛り上がる最高のところです。次ABCDの中から、選びなさい。
 

白い日がさがチカチカゆれて、子どもの手を引いた女の人が、葉桜の間を遠くなった
      A
ザアザアと音を増す川のひびき。
      B
ノリオは、かまをまた使いだす。
      C
サクッ、サクッ、サクッ、母ちゃん帰れ。
      D
サクッ、サクッ、サクッ、母ちゃん帰れ。
 
 人数を聞くと、Bが2人、Cが21人であった。そこで、次の図をかき補助発問をした。

 ピナクルは、すでにノリオの気持ちがかわったところではなくて、今かわりそうだとというところです。そして、大切な言葉の後です。


 

     ピナクル



  D          A
 
 Bが23人となった。
 その理由として「川」という言葉があるからということであった。補足として、「ザアザア」は全部で何カ所出ているかさがさせた。「ザアザア」があるのは次の3カ所である。
 クライマックスの部分を除けば次の2カ所となる。
@ザアザア P62の12行目(ザアザアとおし寄せてくるこわい川)
Aザアザア P67の2行目(ザアザア高まる川音の中に、ただ、母ちゃんを待っていた。)
 この場面はどれも「母ちゃんをまっている」ところである。ノリオにとって「ザアザア」という音は、母ちゃんを強く思い出すきっかけとなる音なのである。
 
(9)第9時 7月16日(月)

発問15 この物語にはくりかえし「川っぷち」がでてきています。川っぷちは、どんな様子ですか。順番にノートに書きなさい。
 











 

@若いやなぎ
Aすすきのほ
B白くすすけた旗をふり
C安全な砂の上
D砂の上
E雑草のしげみのかげ、こおろぎ
F空っ風
G青いいぬふぐり
Hかれ草の中でもうじきくる春をまっている
I(岸辺)青々としげった岸辺の草
 

発問16 川っぷちの様子は何を象徴していますか。ノートに書きなさい。
 
・ノリオの世界
・ノリオの見たもの
・ノリオの思い
・ノリオの気持ち

発問17  ノリオにとって川とは何ですか。ノートに書きなさい。
 
・友達
・お母さん
・遊び仲間
・思い出

発問18 『川とノリオ』の主題は何ですか。主題とは「人間とは〜」「世の中とは〜」と書き出すと書きやすいです。この物語でいいたかったことは何でしょうか。自分なりに考えて書いてごらんなさい。
 
 子どもたちからは、次の9通りの考えが出された。
・人は悲しみを知り、悲しみを覚え、悲しみを越えておおきくなるものだ。
・人はかなしいもの。
・人はちっぽけな存在
・人間とは川の流れのように気持ちの変化があるものである。
・世の中はこわい               
・人間は友達や家族がいないと生きていけない。
・人間とは一人では生きていけないもの
・人間はいろいろことを経験しながら成長していく。
・人間はだれとでも仲良くなれる。
 
(10)第10時 7月17日(火)
 この時間は、評論文の書き方を説明した。
 まずプロットのたてかたを指導した。どんな項目で評論文を書いているかである。
 例えばとして、次のように板書した。

一 登場人物の検討
二 色
三 対比
四 擬人法
五 ノリオにとって川とは
六 「川っぷち」とは何をあらわすか
七 主題
 
 そして、教師が書いた評論文の例(最初の原稿用紙4枚分)を配り、読んだ。
 その後、プロットをノートに書くように指示した。
 
(11)第11時〜第13時 7月18日(水)2時間、7月19日(木)1時間
 3時間を評論文の書く時間にあてた。終わらない子は宿題とした。
 評論文を書いたのは初めてであったが、全員が原稿用紙5枚以上を書き、もっとも長い子で22枚であった。

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