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 パロディーの詩の授業
                                                      TOSS SANJO 田 代 勝 巳
 
 
パロディーのおもしろさと主題に迫るように授業を組み立てた。「君死にたまふことなかれ」(与謝野晶子)を1連だけ暗唱させ、しばらくしてからの授業である。

1 発問・指示
 
 次の詩を提示する。
 □□死にたまふことなかれ
 末の世に生まれし君ならば
 人のなさけはまさりしを
 人は海さへにごらせて 
 君に死ねよとをしへしや
 君を浜辺に死ねよとて
 今日まで君をそだてしや

 □□
死にたまふことなかれ
 人はみづから出でまさね
 かたみに
□□に泡ふかせ
 砂の浜辺に死ねよとて
 死ぬるを
□□のほまれとは
 不倶戴天の
□□だにも
 さまではいかで思ひけむ

 

指示1 自分で3回読んでごらんなさい。わからない字はとばしていきます。読み終わったらすわります。全員起立。
 
  この詩を知っているかきく。
  そのあとで「読めない字はないか。」「意味のわからない言葉はないか」確認する。
  ・〜を=〜のに         ・出でます=いらっしゃる         
  ・かたみに=たがいに      ・だにも=〜だって            
  ・さまで=それほどまで     ・いかで〜けむ=どうして〜だろうか(反語)
  ・不倶戴天=(共にこの世に生きてはいない意) 命をかけても報復しなければやまないほど深く怨むこと。本来は、父の仇は必ず殺すべきであるという意。

発問1 赤い□□の中には同じ言葉が入りますか。何という言葉でしょうか。ノートに書きなさい。
 
  指名してきいていく。
 「君」がでたら、同じと考えの人で起立し、音読する。
  別の考えがないかきく。

発問2 実は「君」ではありません。何が入ると思いますか。ノートに書きなさい。(補助発問)詩をよく読むと、わかります。
 
 「浜辺」「泡ふかせ」から考えさせる。「カニ」という正解がでたら、なぜわかったの か確認する。

発問3 では最後の□□には何が入ると思いますか。
 
  「不倶戴天」から考えさせる。 正解は「サル」

発問4 この詩の題名は、実は「カニを□歌」です。この□には何が入ると思いますか。
 
 「悼む」(読めるか確認する)(悼む・・・心がゆれうごく)
 「悼む」      人の死を悲しみ、惜しむ。
 「哀れむ」     気の毒がる。
 「思いやる」    将来が心配になる。
 「悲しむ・哀しむ」 心が痛み、泣きたいような気持ちになる。(何とかしようと思っても手の施しようがないとき) 
 「嘆く」      ひどく悲しく思う。(あきらめ、批判的な気持ち)
 「惜しむ」     残念に思う
 「弔い」      人の死を哀しみ、惜しむこと。
(「弔う」・・・人の死をいたみ、その家族をなぐさめる)

指示3 先生のあとについて読みましょう。(追い読み) 
 

指示4 みんなで声をそろえて読みましょう。
 

発問5 くり返し使われている言葉があります。どれですか。
 

発問6 「君」が4回使われています。「君」とはだれのことですか。
 
  カニ

発問7 「人」が3回出ています。別の言葉で言いかえると何になりますか。
 
  人間

発問8 「死」という言葉もくり返し出てきています。この詩にでてくるカニはまだ生きていますか。それとも死んだのですか。 
 
  死んだ。「悼む」だから

発問9 カニが死んだのはなぜでしょうか。それがわかる行があります。何行目ですか。
 
  4行目

発問10 この詩で言いたいことはズバリ何でしょうか。一言で書きなさい。
 
自然愛護 共生、自然を大切に、

発問11 この詩のもとになった詩は何という詩ですか。作者は誰ですか。
 
 詩を提示する。「君しにたまふことなかれ」は5連からなる詩だがその第1連と第3連であることを説明する。 

 あゝをとうとよ君を泣く
 君死にたまふことなかれ
 末に生れし君なれば
 親のなさけはまさりしも
 親は刃をにぎらせて
 人を殺せとをしへしや
 人を殺して死ねよとて
 二十四までをそだてしや

 君死にたまふことなかれ
 すめらみことは戦ひに
 おほみづからは出でまさね
 かたみに人の血を流し
 獣の道に死ねよとは
 死ぬるを人のほまれとは
 大みこゝろの深ければ
 もとよりいかで思されむ
           
 

指示5 みんなで声をそろえて読んでみましょう。
 

発問14 このようにある作品の表現をまねて、べつの内容におもしろく作りかえたものを何と言いますか。
 
   パロディー、もじり

説明1 今から1000年以上前、日本で「伊勢物語」という物語がつくられました。全部で125のお話が書かれています。江戸時代に、その伊勢物語のパロディーがつくられました。125のお話を全てをパロディーにしたいのです。(何という題名がつけられたと思いますか)仁勢物語です。日本では昔から、このようなパロディー、もじり、がつくられていたのです。次の時間にパロディーをつくってみましょう。
 
  
                             
 【資料】
「カニを悼む歌」は、『あなたの世界が広がる詩』(川崎洋・小学館)の中に紹介されていた。その中で川崎洋氏は、次のように述べている。       
 このパロディー詩を読むと、もじりのおもしろさはそれとして、与謝野晶子の詩に歌われている生命へのいとおしさに共鳴するわりには、人類の生命にとってかけがえのない海をわたしたちは汚してしまっている、そのことにギクリとする。とともに、人生の悲哀や憂愁、苦悩ばかりが明治以来の詩の主要なテーマとされてきたーそうしたくそ真面目な態度に対する皮肉を感じる。日本の文学は喜怒哀楽の怒と哀にだけ偏り過ぎてきた。喜びや楽しみを書いた作品は評価が一段低かった。近代の苦悩について書いてあるものが上等で、人生の深みにおもりをおろしていると最敬礼されえきた。パロディー詩はいわば言葉遊びの詩で、これまでの傾向に対するパンチ力ある方法として有効である。
 パロディーというのは言うまでもなく、特定の作品の語句や文体をたくみに真似て、全体としては別の内容をこっけいに表現するものだ。パロディーという言葉の語源は「本物と見かけがよく似ている」という意味と「歌」という意味からなるギリシャ語のパロディア(paroidia)である。日本でも昔からパロディーは行われていた。『伊勢物語』という古典は平安時代の歌物語で、『源氏物語』その他の後に続いた文芸に影響をおよぼし、歌人必読の書として長いあいだ尊重されてきた。主人公「昔男」の愛情と風雅のさまざまな姿を描いたもので、小話がさっと125、和歌209首からなる。作者はつまびらかではない。ところがこの壮大な全文を和歌を含めてパロディー化したすごい作品がある。題名も『仁勢物語』!  『あなたの世界が広がる詩』(川崎洋・小学館)P.74〜75
 

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