いじめの授業3
                                                                      TOSS SANJO  田代勝巳
 いじめにあったらどうするのか。いじめに立ち向かうこと、いじめに負けないということも実は大切なことである。第3時はいじめにあった時にどうするかを考える授業である。
 宍戸江利花とディズレリーのエピソードは「いじめ」に負けない子を育てる』(明治図書)より

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【第3時】ねらい  いじめにあったらどうするのかを考える。

指示1 これから配る資料をだまって読みなさい。
 

 中学生になりました。新しいクラスです。クラスの中には小学校の時、同じクラス だった人が何人かいます。 しかし、ある日「にらんだ」などと言いがかりをつけられ、まわりから無視されるようになりました。
 最初は4、5人から無視されるだけだったのが、だんだんと増えていきました。
 そのうち、クラスのほとんどの子が口をきいてくれなくなりました。
 しまいには、クラスの中でひとりぼっちになってしまいました。
 友だちに相談しようとしても、さっと逃げていくように行ってしまいます。
 先生に相談すれば、「ちくった」と思われて、さらにいじめがひどくなるのではと心配です。
 家族に相談しようかと考えましたが、「中学校でとてもがんばっている」と思われているので、よけいな心配をかけたくありません。
  無視だけではなく、いやがらせも始まりました。
 
 教師が一度読む。

発問1 この場合あなただったら、どうしますか。
 
 A 家族や先生に相談する 
 B 力ずくでやめさせる。
 C 学校に行かない   
 D フリースクールに行く
 E クラスを変えてもらう

発問2 どの考えに賛成ですか。
 
 A 8人、B 1人 C 12人、D5人、E 1人でした。(複数回答可とした)

発問3 今度は一つずつ聞いていきます。Aに賛成の人? 反対の人?
 
 賛成が10人、反対が13人

指示1 その理由を発表してごらんなさい。
 
、賛成派は、「とにかく勇気を出して言うべきだ」、「無視されてい るだけなんだから言えばいい」というものでした。反対派は「自分だったら言う勇気がないかも」「家族に気にしてもらうのはかえってつらい」
 
 以下、同じようにB、Cについて聞いていく。討論できそうなところがあったら討論してみる。
 Bに対しては、賛成が3人、反対が20人。 賛成派は「とにかく自分で何とかするべきだ」「力でだめでも、言うぐらいしたほうが いい」という考え。反対派は、「そんなことしてもいじめはなくならない」「かえってやられる」「言ったぐらいでやめるんだったら、いじめなんておきない」
 
  Cに対しては、賛成が12人、反対が8人。(悩んでいる子3人)賛成派は「自分だったらそうしてしまう」というのが主な理由で、反対派は「それは逃げている」「学校に行かないとたいへんだ」「学校に行くべきだ」という理由を挙げた。
 

説明1 宍戸江利花は、東京のはずれの立川市で生まれました。お父さんは、アメリカ人で立川基地の軍人でした。お母さんは、基地のそばの小料理屋さんがで働いている日本人でした。つまり江利花は、アメリカ人と日本人との間に生まれた子どもでした。そのため、色が黒く、髪もパーマがかかっていました。5歳のとき、父親がいなくなり、お母さんと二人きりですごしました。保育園の時、周りの子どもたちから、「こんけつじ!」「あいのこ!」などと言われて、毎日いじめられていました。
 ある日、悪口がもとでけんかをしてしまい、負けて泣きながら家に帰ってきました。
ところが、お母さんは家の中からかぎをかけて、江利花を家に入れてくれませんでした。そのことがあってから、江利花は絶対に自分から負けたとは思わないようになりました。どんなに相手に殴られようが、けっとばされようが、けっして「まいった」とは言いませんでした。そして、相手が「もうわかったからごめんなさい」と言うまで、」けんかを続けたのでした。
 江利花はこの時の体験から、相手にやられても耐えて、相手があきらめるまでがんばるということを学びました。
 また江利花は、小学校1年生の時から空手を習い始めました。けんかが強かったから始めたのではありません。むしろ、けんかは弱かったのです。江利花のお母さんは護身術として、そして精神的に強くなってほしかったので空手を習わせたかったのだそうです。江利花は一生懸命に練習しました。雨の日も、寒い冬の日も、台風の時にも週に3日の練習を続けました。いっしょに入った子どもたちは、だんだんとやめていきましたが、江利花はとにかく続けました。そして大会で優勝をするようになったのです。
 空手を通じて、江利花は精神的にも強くなり、いじめにも負けなくなりました。
 さて、この江利花とはだれのことかわかりますか。
 
 ここまで話して現在の宍戸江利花さんがうつっているビデオを見た。(アジャコング)

説明2  しかし、江利花をそこまで強くしたのは、お母さんの強さだったのかもしれません。江利花をかばったり、あまやかしたりしていたら、こうはならなかったでしょう。ずっと、いじめれ続けていたかもしれません。ずっと逃げていたかもしれません。
 

説明3 もう一人紹介します。イギリスにディズレリーという少年がいました。学校で、毎日毎日いじめられていました。いじめはずっと続いていました。
 ディズレリーのお母さんは、そんなディズレリーにボクシングを習わせることにしました。いじめる人たちと戦わせるためです。
 そして十分にボクシングの力がついたときに、ディズレリーはついに立ち上がり、いじめっ子たちとたたかいました。ディズレリーはいじめていた子たちを全員ぶちのめしました。
 このことでディズレリーへのいじめはなくなりました。そればかりではなく、自信ををつけたディズレリーは勉強にも運動にもがんばるようになりました。
 
 ディズレリーは後にイギリスの首相となりました。
 

説明4 ディズレリーの場合も、戦う決意をしたからこそ、いじめを克服したといいえます。 いじめっ子たちのいいなりになっていたら、首相にはなっていなかったでしょう。
 いじめにあったらどうするか。それはその時になってみないとわかりません。当事者で
なければわからない苦しみがあるはずです。しかし、「いじめになんか負けないぞ」という強い気持ちを持つことも大切だと思います。やられっぱなしで、じっと我慢する必要はないと思います。力で対抗できるのなら、それも必要だと思います。しかし対抗できな場合もあるでしょう。むしろ、そういう時が多いのかもしれません。そういう時は、頭をつかって対抗するしかありません。相談するのも一つの方法です。とにかくひとりぼっになってはだめです。一人でも自分の仲間をみつけることが大切です。
 

指示2 今日の感想を書きなさい。
 
○昔いじめられていた人でも、ちゃんといろいろなところで活躍している人がいることを知って、私も、もしいじめらたら親や先生にそうだんしようと思う。
○学校に行かないのは最後の手段と言われて、考えがあまいと思った。いじめられたらたちむかっていくのも大事だと思った。
○もし私がいじめられることがあったら、宍戸江利花さんやディズレリーさんのように、やられたらやりかえしたいと思った。
○強くなっていじめに勝った人もいることを知った。でも、私はそんなに強くないかもしれないから、いじめられた時は、親に相談する。
○強い心をもっていくことが、何よりも大切だということ。
○いじめられた人でもいじめをかえせるということがわかった。力の限りやればきっとできるかもしれない。
○力ずくでやめてもらうのは、よーく考えてみればできるかもしれない。ケンカとかできなくても、得意なものでたたかえばいい。
○宍戸江利花さんやディズレリーさんはすごいと思った。ボクシングは無理でも、気持ちはいじめをする人に負けたくないと思った。
 
 
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