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1 ひらがなのおこり(松野孝雄氏の論文)



田代勝巳(TOSS SANJO)

『日本教育方法技術体系』第6巻「小学6年生の教え方大事典」P.12〜16 松野孝雄氏の「ひらがなのおこり」をWeb化した。


1 万葉がなで自分の名前を

黒板に「か」と書き、説明する。

説明1 日本語のひらがなは漢字から生まれました。「か」は「加」という漢字が「」となり、「か」となったのです。 

黒板に「か←←加」と書き加える。
その後すぐに、次の10個の漢字を黒板に書く。

I H G F E D C B A @
川 幾 礼 和 毛 与 天 末 不 仁


発問1 これらの漢字は、何というひらがなになったのでしょうか。

指示1 自分の予想を1つずつノートに書きなさい。

子どもは悩みながらも楽しんでノートに書いていた。F、Gまではスラスラといく子も多い。しかしH、Iで考えこむ。
5分後、1つずつ発表させていく。

指示2 @について考えます。○○君、発表しなさい。

全員に予想をノートに書かせているのだから、突然の指名でよい。
私の学級では、清君が「に」と答えた。黒板の「仁」のしたに「に」と板書する。

指示3 同じ意見の人は手をあげなさい。

人数を確認して、人数も黒板に書きこむ。

指示4 ちがう意見の人は手をあげなさい。

手をあげている子のなかから指名する。指示2・3のときと同じように、意見を板書し、同じ意見の人数を確かめる。
意見が出つくしたところで、もったいぶって答えを言う。黒板に答えを書きながら言うとよい。

@の答えは・・・・「イ」がくずれると「│」です。そこに「こ」とあるから「に」です。

正解だった子どもたちは大喜びである。「やった〜!」「あたった」と歓声があがる。
すぐに、「Aについて考えます。」とAの漢字に移る。
以下、A〜Iについても、指示2以降をくりかえす。
特にHとIは正解者がガクッとへる。子どもに予想の理由をきいてみてもよい。おもしろい理由がかえってくる。私の学級ではIの正解者は、0であった。
問題が終わったところで、右下のプリントを配る。教科書にも同様のものがあれば、それを見せてもよい。

説明2 「万葉集」という奈良時代のうたの本は、このような漢字を使って書いてあります。今、みんなが使っているようなひらがなはありませんでした。だから、このように漢字をかなのように使っているものを「万葉がな」といいます。

指示5 自分の名前を「万葉がな」で書きなさい。

「先生の名前なら『未川乃太加於』となります」と言いながら、黒板に書くと、例になってわかりやすい。
子どもは、一字一字探しながらノートに書いていく。
「わー、変な名前になるゥ」「なんだー、この名前は?」とけっこうにぎやかになる。みんな楽しそうであった。
はやく終わった子は隣の子の様子を見たりしている。
「はやく終わった人は、自分の家族の名前を『万葉がな』で書きなさい」と指示しておけば、次々と万葉がなで名前を書いていく。
全員が自分の名前を書き終わったことを確認して、次の指示をする。

指示6 今書いた万葉がなの自分の名前を別の読み方で読みなさい。

「先生の名前なら『すえがわのたかお』になります」と例をあげる。
子どもから「『之』はどうやって読みますか?」という質問がでる。教師の知っている範囲内で答えてやればよい。
子どもたちは、「変な名前になったぁ」とか言いながらも、楽しそうにもう1つの自分の名前を読んでいた。

ひらがなのおこり
あ−阿  か−加  さ−左  た−太  な−奈  は−波  ま−末  や−也  ら−良   わ−和   ん−无
い−以  き−幾  し−之  ち−知  に−仁  ひ−比  み−美         り−利  ゐ−為
う−宇   く−久  す−寸  つ−川  ぬ−奴  ふ−不  む−武  ゆ−由   る−留  
え−衣  け−計  せ−世  て−天  ね−禰  へ−部  め−女         れ−礼  ゑ−恵
お−於  こ−己  そ−曾  と−止  の−乃  ほ−保  も−毛  よ−与   ろ−呂  を−遠

(光村図書『希望』6年下p.102をもとに作成)

2 万葉がなで作文を

前ページのプリントを子どもたち一人一人に用意する。教科書に同様のものがあれば、それでもよい。
原稿用紙を配る。(1人1枚)

説明 これから万葉がなで作文を書きます。内容はなんでもいいです。字数は200字くらいです。かたかなもひががなにします。「ば」や「ぱ」は「は」にします。小さい「っ」もふつうの「つ」にします。たとえば「ストーブ」は「すとうぶ」にして、万葉がなで書けばいいのです。

要点だけ板書する。そうしないと子どもは混乱する。
私は以下のようにした。(実際はたて書き)

万葉がなで作文を書く。
 かたかな→ひらがな 
 ば → は       
 ぱ → は       ストーブ→すとうぶ
 っ →  つ

質問を受け、答える。
質問がなくなったところで、書き始めさせる。

指示1 時間は20分です。書き始めなさい。

教師は、その間、机間巡視をしなfがら子どもの質問を受けたり、相談にのってあげたりすればよい。
はやく終わった子には、「無理をして、もっと長く書きなさい」と指示する。
20分たったところでやめさせる。

指示2 えんぴつを置きなさい。途中でもいいですからえんぴつを置きなさい。

指示3 一番うしろの人、集めて持ってきなさい。

全部集まったところで、新しい原稿用紙を1枚ずつ配る。

説明 これから、今書いた万葉がなの作文を”解読”してもらいます。誰の作文がいくかわかりません。その人の万葉がなの作文を”解読”して、漢字とかながまざったふつうの文に直すのです。

万葉がなの作文を、ランダムに配る。子どもは、誰のがくるか楽しみにして待っていた。
自分のものがきたときは、となりと交換させる。

指示4 ”解読”した結果を新しい原稿用紙に書きなさい。

子どもは真剣にやり始める。1字1字「ひらがなのおこり」のプリントと見比べながら解読していった。誰もしゃべらなかった。時々「わからん」と言っては、また万葉がなの作文に目をやる子もいた。
解読の途中でチャイムがなった。しかし、誰も”解読”をやめようとはしなかった。
授業後、ある男の子が「暗号を作ったり、暗号を解いたりするみたいでとってもおもしろかった」と言ってくれた。
ある女の子は「まるで漢文を書いているようで、えらい人になったような気分になった」と日記に書いてきた。
なお”解読”していない部分は宿題として、翌日集めた。

指示5 万葉がなの作文と”解読”した作文をホチキスでとめ、提出しなさい。

そうしないと、教師が万葉がなの作文を”解読”しなければならなくなり、非常に困る。
万葉がなの作文と、それを”解読”した作文を示す。
 
  (以下省略)


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