有名「詩・文」の暗唱システム
                              
                                                         TOSS SANJO 田代勝巳(tkenk@rose.ocn.ne.jp)
                            
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有名詩文をどのようにして暗唱させていくのか。そしてどのようなシステムにするのかまとめました。

 有名詩文の暗唱は、最初は短いものがよい。『方丈記』の冒頭から暗唱させることとした。
 『方丈記』の冒頭を板書する。

ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶ泡沫は、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例なし。世中にある人とすみかと、またかくのごとし。
 

趣意説明 これは方丈記の冒頭です。鎌倉時代の作品ですから、約800年間も語り継がれていることになります。これを暗唱します。なぜ暗唱するか話します。一つ目は、文章を書く力がつくということです。よい文章には心地よいリズムがあります。そのリズムを暗唱して自分のものにするのです。すると、そのリズムが生かされ、よい文章が書けるようになるのです。二つ目は、日本の大切な文化を受け継ぐということです。三つ目はみなさんが中学、高校に行ったときに必ず役立つからです。そして、みなさんぐらいの時期が文章を暗記する能力がとても優れているのです。この時期に優れた作品を暗唱できるようにがんばりましょう。
 

指示1 ノートに写しなさい。写し終わったら読んでいなさい。
 

指示2 先生が一度読みます。読み方のわからない漢字あったら読み仮名を書きなさい。
 

指示3 先生が読んだ後から、ついて読みなさい。
 
 追い読みをさせながら、姿勢、息を吸って読むこと、はっきりと読むこと等を一時一事の原則で指導していく。追い読みが終わった段階で、

指示4 全員起立。自分で3回声に出して読みなさい。読み終わった人からすわりなさい。
 

指示5 これから少しずつ言葉をけしていきます。(言葉をけす)では読んでみましょう。はい。
 
 板書した文章の一部分を消して、読ませる。読めたらさらに文書の一部を消していく。これを繰り返し、最後は何も書いていない状態で読ませる。

指示6 明日までに暗唱してきましょう。暗唱できるようになるには、30回ぐらい声にだして読むといいです。必ず声に出して読むのです。
 
 向山洋一氏は次のように述べている。「覚えるときは30回ぐらい声を出して言ってみるんだ。」(『向山洋一年齢別実践記録集第10巻』P.186東京教育技術研究所)「30回音読」という具体的な数字をあげて、暗唱の方法を示してやるのである。
 
 
 翌日に暗唱してきたかテストを行う。次のように言って、指名なしで始める。

指示7 方丈記を暗唱できるかテストをします。自信のない人から立って、言います。最後まですらすらと言えたら合格です。ではどうぞ。
 
 少しでも間違えたら「おしい」「残念」等と言ってテンポよく進める。できるだけ厳しく評定する。その方が緊張感も高まり、意欲的に挑戦するようになる。そのうちに「合格」がでてくる。5人合格した時点で次のように言う。

指示8 ここまでにします。まだ挑戦したい人は、休み時間に先生か、今合格した5人の人に聞いてもらいなさい。「合格」と言われたら先生に教えてください。
 
合格した子は名簿の一覧に印をつけておき、この名簿を教室に常においておくようにする。
 
 【システム化する】
 次回からは授業の合間などに、有名詩文を提示し、「覚えてきなさい」と言うだけである。そして覚えてきた子は教師の前で、審査を受ける。1回目同様、はじめの合格5人目までが審査官となる。合格したら名簿に印をつけていくわけである。このようなシステムをつくっておくのである。
 
 
 【向山氏の暗唱詩文】
 向山氏の暗唱させた「詩・文」は次の通り。『国語の授業が楽しくなる』P.17〜19、明治図書より)
『山のあなた』 『小景異情』 『小諸なる古城のほとり』 『千曲川旅情の歌』 『生ひ立ちの記T』 『生ひ立ちの記U』 『雪』 『落葉』 『星落秋風五文原』 『春望』 『かじ』 『平家物語』の冒頭、 『方丈記』の冒頭、『雨ニモ負ケズ』 『からまつ』 『貧窮問答歌』 憲法前文 俳句五句 『君死に給うことなかれ』 『偶成』 『奥の細道』の冒頭, 啄木十首 『雨月物語』の冒頭 百人一首 『曽根崎心中』の冒頭 『夜明け前』の冒頭 『初恋』 『勧学』 『貧交行』 金言名言(自分で選んで10) 『高楼』 『かっぱ・さる』 『魏志倭人伝』の冒頭 『はないちもんめ』 向山洋一の文
【参考文献】
向山洋一年齢別実践記録集 第10巻 P.196〜197 
新教育課程の授業QA事典(明治図書)P.56 

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